お腹を下す原因はさまざま
下痢とは便に水分が多く含まれ、排便の回数が多くなる症状を指します。
「お腹が冷えると、すぐゴロゴロしてしまう」
「試験直前やプレゼンの前など緊張するシーンでお腹がゆるくなる」
「牛乳やヨーグルトを食べた後は決まってお腹をくだす」
「お酒を飲んだ翌日には何度もトイレに行きたくなる」
このように環境や精神的なストレス、食べたものなどさまざまな原因で引き起こされます。
下痢が起きるメカニズム
なぜ下痢の症状が起きるのか。その仕組みを解説するために、まずは便がどうやってつくられるかを紹介します。
私たちが口から摂取した食べ物は、食道を通って胃に入りそこで消化されます。消化された食べ物は胃の中でドロドロの状態になります。その後、消化酵素によって栄養素に分解され、液体となって小腸の中を進みながら体内に吸収されていきます。大腸に到達するときにはほとんど液体の状態です。
本来は大腸の中で水分が吸収され、固形の便として排出されるはずなのですが大腸を通る時間が短すぎると水分がうまく吸収されません。すると水分の多いまま便が体外に出されます。それが下痢の症状です。
下痢症の原因として考えられる病気
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は慢性的な下痢や腹痛を引き起こす病気です。内視鏡検査をしても特に異常が確認されない特徴があります。通勤や通学で電車に乗ったとき、会社のプレゼンなど重要な用事の前、精神的な負荷が掛かった際に下痢や腹痛などの症状がみられる傾向があります。
炎症性腸疾患
人間の免疫機構が異常が生じ、自身の免疫力で大腸粘膜を攻撃してしまうことで粘膜上で炎症が生じてしまう病気です。炎症性腸疾患には潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類あり、ともに症状としては、腹痛、下痢、血便などがあげられます。
大腸がん
大腸がんは名前の通り、大腸でみられる「悪性腫瘍」です。「大腸がん」がどこまで下層粘膜まで到達しているかで、「早期がん」と「進行がん」に分類されます。大腸がんでみられる症状としては、腹痛、血便、下痢、便秘、お腹の張り、便が急に長細くなるなどがあります。
下痢が生じた場合はどうしたら良いの?
下痢症状がみられる場合は、決して軽視することなく、必ず消化器内科を標榜しているクリニックまで受診してください。
下痢は消化管に問題がみられる時によく発症しますが、下痢はそれ以外でも様々な要因が考えられます。つまり、現在生じている下痢がただの生活習慣の乱れによって生じているとは限らないということです。ただの生活習慣の乱れが原因で発症している場合もありますが、治療目的で内服している医薬品や、他の病気が原因で下痢が発症している場合もあります。
下痢が生じている場合、下痢が慢性的に続いている場合はお早めに消化器内科を標榜しているクリニックへ受診し、精密検査として内視鏡検査(大腸カメラ検査)を受けるようにしてください。内視鏡検査を受診して消化管粘膜を隈なく観察し、下痢が生じている原因を解明していただきたく思います。
長年の不調も解決できる新薬誕生
つまり、下痢も便秘と同じく大腸の機能不全が引き金となっています。下痢が続くと脱水症状や栄養失調、肛門の炎症につながりかねません。もしかすると、消化器疾患のサインの可能性だってあるのです。
下痢そのものは「疾患」ではありませんが、アレルギー性胃腸炎、過敏性腸症候群、大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎などの疾患の症状として表れているケースがあります。「体質だから」と放っておかずに一度、しっかりと検査をするのがおすすめです。
潰瘍性大腸炎と言えば、安倍首相が「第一次安倍政権」のときに悩んだ病であることが知られています。大腸の粘膜が炎症し、激しい腹痛や下痢、重症化すると貧血や発熱などの症状が起きる病気です。実は子どもの頃から潰瘍性大腸炎だったけれど、40代になって初めて検査をして不調の理由が分かった、という方もいらっしゃいます。
この症状は、新薬によって早期回復ができることが実証されました。安倍首相が復帰するのに一役買ったのがこの新薬でした。点滴か経口で摂取できます。
お腹がゆるい、すぐに下してしまう。そんな悩みを長年抱えている方は、ぜひ診療にいらしてください。思っている以上に簡単に快方へ向かうかもしれませんよ。
監修:うちだ内視鏡・内科クリニック 院長 内田耕栄