過敏性腸症候群

以下の項目に該当する方は要注意です

  • 便通異常を感じる
  • 慢性的に下痢が続く
  • 慢性的に便秘が続く
  • 慢性的にお腹が痛い(腹痛を感じる)
  • お腹が張っているように感じる
  • ガスが溜まっている感じがする
  • 排便後でもすぐに便意を感じることがある
  • 通勤時や緊張するとトイレが近くなる

当院では消化器専門外来を実施しており、過敏性腸症候群の診察や検査を行っています。上記のような項目に該当する方はお早めにご相談下さい。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは、腹痛やお腹の違和感、便秘、下痢などの消化器症状が慢性的に続く病気で、大腸の粘膜上に潰瘍や炎症などが生じない特徴があります。

日頃から精神的なストレスを感じていると、副交感神経系が活性化してしまいます。副交感神経系が活性化すると、便を体外に排出しようとする腸管の働きが促進し、過敏性腸症候群は発症すると言われています。

また近年では、過敏性腸症候群を発症する方は男女ともに増加傾向にあると言われており、日本人の約10人に1人が過敏性腸症候群とも報告されています。(特に女性の方が多いそうです)

過敏性腸症候群は下痢や便秘、腹痛、お腹の張りなどの症状がみられます。過敏性腸症候群が発症していると、通勤時に急に腹痛や便意を感じたりしてしまいますので、外出などが不安になることもあります。そのため日々の生活の質(QOL)低下に繋がってしまいます。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の明確な発症原因は解明されておりませんが、下記のような項目が原因であると考えられております。

精神的ストレス

腸は「第二の脳」と言われるくらい、腸管と脳は密接に関連しています。日常生活では実感しにくいかもしれませんが、脳や心の状態は自律神経系を介して腸管にも影響を及ぼしています。

色々とストレスがかかる現代社会において、過敏性腸症候群を発症する患者数が増加傾向にあることは、脳や心が腸管と関連しているためであると考えられています。

腸の過剰反応

過敏性腸症候群を発症していると腸管粘膜が過敏状態となっています。そのため、便が通過する際に、腸管に少し便が触れるだけでも過剰に痛みを感じてしまいます。これが過敏性腸症候群における腹痛の原因です。

生活習慣

食の欧米化の影響もあり日本人は脂肪分を多く含む食べ物やカロリーの多い食べ物を食べるようになりました。この食習慣の変化も、過敏性腸症候群の発症に関与していると言われています。

脂肪分やカロリーの高い食べ物の過剰摂取は下痢やお腹の張りなどの症状を引き起こします。また、コーヒーなどのカフェインを多く含む飲食物やアルコールの過剰摂取は過敏性腸症候群の症状を悪化させます。これらの飲食物は摂取してはいけないという訳ではないですが、食べ過ぎ・飲み過ぎに注意して下さい。

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群では慢性的な下痢、慢性的な便秘、慢性的に便秘と下痢が交互に繰り返される、慢性的な腹痛、お腹の張り(腹部膨満感)、おならがよく出る、吐き気がする、頭痛、全身の疲労などがみられます。

過敏性腸症候群の診察

過敏性腸症候群では、まずは生じている症状の程度やいつから症状がみられるのかを診察し、必要に応じて内視鏡検査(大腸カメラ検査)や血液検査を行います。

過敏性腸症候群の診断基準(Rome III基準)

最近3ヶ月間の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、
①排便によって症状が改善する
②症状の程度によって排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
③症状の程度によって便の形状(外観)が変わる

①〜③のうち2項目以上を満たした場合に診断されます。

内視鏡検査(大腸カメラ検査)

大腸カメラ検査を行うことで、肛門から大腸全体を直接観察することができます。過敏性腸症候群の検査で大腸カメラ検査を行う理由としては、大腸がん等の重大な病気の可能性を排除するためです。

というのも大腸がんは死亡率が高い病気で有名ですが、大腸がんでみられる症状は過敏性腸症候群と同じく下痢や便秘、腹痛といった症状です。つまり現在生じている症状(下痢や便秘、腹痛)が大腸がんによって生じているのかを、大腸カメラ検査で確認する必要があります。大腸カメラ検査を行っても大腸に異常がみられない際は過敏性腸症候群と診断されます。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療方法は生じている症状によって異なります。主な治療法としては薬物療法とメンタルケアです。

薬物療法では腸管の働きを調節してくれるお薬、腸管の過敏状態を抑えるお薬、腸内細菌叢のバランスを整えてくれるお薬などの中から、現在生じている症状に合った適切なお薬を処方します。それでも症状が改善しない場合は他のお薬に変更していきます。

また、過敏性腸症候群の発症には日々の生活習慣も関わってきますので、食事習慣や運動習慣の改善も行います。

    食事習慣の改善では、

  • 消化の良い食事をよく食べるようにする
  • 糖質(炭水化物、甘いもの、果物)は食べ過ぎない
  • お肉などの脂肪分を多く含む食べ物を食べ過ぎない
  • アルコールやコーヒーの過剰摂取を控える
  • 朝昼晩の3食規則正しい食事を心掛ける
  • ヨーグルトなどの乳製品を適度に食べるようにする

食事習慣の改善では上記のような項目があげられます。運動習慣では定期的に歩いたり、ジョキングをして、身体を動かすようにして下さい。またストレスを軽減させるためにも睡眠時間をしっかりと確保することや趣味を見つけることも有効です。

お問い合わせ

当院では消化器内視鏡専門医による消化器専門外来を実施しております。過敏性腸症候群は下痢や便秘、腹痛などの症状がみられますので、比較的軽視されることが多い病気ですが、症状がみられる際は大腸カメラ検査による精密検査をお勧めします。

「ただの下痢」「ただの便秘」「ただの腹痛」と思っていても実は潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、大腸がんなどが原因となっていることもあります。些細な症状でも構いませんので、お腹の不調を感じた際はお気軽にご相談ください。

監修:うちだ内視鏡・内科クリニック 院長 内田耕栄